ひらひらと形容するには頼りない、雪の羽が空から落ちてくる。
ああきっと、今空の上でまた一人翼をもがれた天使でもいるんだ。
なんて、ガラにもないことを考えながら、地へ舞い堕ち積もった羽根を踏みしめる。
一歩づつ歩むと、その後ろには足跡の軌跡。
まだ薄い白の中についた、今ここに自分のいた証。
もう少ししたら、天使のもがれた羽根によって掻き消されるほどの、頼りない。
この雪の羽根の持ち主だった天使は、一体何をしたというのだろう。
人間は持つことを許されなかった翼を持ち、空を駆けることを許された者が、
その特権を剥奪される程の大罪は一体何?
何をしたんだろう、彼は。
何をしたというんだろう、君は。
真っ白な闇を見止めて、思わず足を止める。足音が途切れる。軌跡が止まる。
吐いた息さえも白い。見上げた灰色の空からは似つかわしくない雪が降る。
それらは地へと足をつければ、たちまち羽根から闇へと変貌する。
その白はまるで君のようだと。思ってしまったから。
嗚呼、どうして神様はいないんだろう。いたとしたら、なんて不公平な存在なんだろう。
僕から君を、奪うだなんて。
彼が何をしたというのだろう。いわれなく翼をもがれるほどのことを?
一緒にただ、横に並んで歩き続けていたかっただけなのに。
ねぇ、何も無い白い闇は、どうしても怖いんだ。君を思い出させるから。
暗い闇になら、まだ君が囚われているんじゃないかって思えるのに。
あの時確かにこの手は君を掴んでいたというのに。
暫く呆然と立ち尽くしていて、君の声ではない僕の名を呼ぶ声に顔を上げる。
曖昧な笑みをそれに返してから、振り返ると、
そこにはもう既に、先ほどまでの僕の生きてきた軌跡は無くて。
翼をもがれた天使の最後の悪足掻きかもしれない。
僕の軌跡を消すことで、その存在を示したかったのかもしれない。
だったら今すぐここに堕ちてきてくれればいいのに。それはきっと君だから。
僕の軌跡を消した白い闇に薄く微笑んで、前を向いて歩き出す。
どうしたって今は、君が居ない前に進んでいかなければならないから。
(c) Toki Tsukisiro 2006
2006年の正月ss。
イメージは一騎であり、僚であり。でも途中からカオルでもいけるんじゃなかろうかとも思った(笑)
ていうか正月位明るい話を書けよって話ですか。
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