『 snow Child 』



 雪が降る。

 それはひどく寒くて、けれど風が吹くよりもそうは感じない。
 ただ静かに、音を吸収しながら空から落ちるそれが視界を埋める。
 大地を白く覆い尽くしたその絨毯に身を沈めたまま息を吐くと、それが一瞬凍ってすぐに消えた。

 ―――あの日も、寒い日だった。

 いつだって、分岐の日は雪と共にある。白い、寒い日。


 ざく、ざく。雪を踏みしめる音。

 ほんの少し荒いその足音が、寝転ぶ自分の頭の近くで止まった。

 そして上から微かに聞こえた、聞き逃さなかった、溜息と舌打ち。

 「―――おい、死んでんのか?」

 普通は生きているか聞くものだろう、と思ったけれど、どうでもよかった。
 ここに置いていかれるのなら、それでもいいかな、なんて少しだけ思って、
 趣味悪く死んだフリでもしようかと思ったのだけれど、呼吸のために吐き出した息が、白く、凍って。
 目を閉じているから見えないけれど、皮肉だ、と思った。
 殺されてもいい、殺されそうになったこの白さに、
 今、自分が生きているという証を、見せつけられるなんて。

 「死んでねェならさっさと起きろ。馬鹿かテメェは」

 「・・・神田が」

 吐く息が白い。なのにどうして僕は、この世界に沈まないのだろう。
 いつも中途半端なまま、ただ前を見ることしかできなくて。
 そうすることできっと、今の自分が迷って、苦しんでいることを見ないようにしているだけなのだと、
 気づいて、しまったから。

 「神田が言ったんですよ。僕の“白”を残してくれるって。」

 かの日の戯言。夜の帳を見上げながら、雪のように白い月に吐いた。
 あんな風に、真暗な中でも光っていられるのならと思った。
 けれど、気づいてしまったから。

 月は決して、自分だけでは輝けないということに。

 この雪と、同じ様に。

 降り続ける雪は、既に黒いコートの上にもちらばっていて、白く染め上げる。

 もうすぐきっと、沈むことができる。この白の世界に。そう思っていた。
 それでもよかったのだ。方法はどうあれ、きっとこの、自ら輝ける漆黒の衣をまとった人は、
 約束を破ること無く、自分の“白”を、自分がここにいたことをずっと、忘れずにいてくれるだろうから。
 そうして、ずっと傍においてくれるのだろうから。
 それでいいと、そう思っていた。


 けれど。

 容赦無く蹴飛ばされた後頭部の痛みに、無理矢理現実に引き戻された。

 「痛・・・・・・・」

 それでも半ば意地で、身体は起こさなかった。
 恨めしく頭上の人を見上げれば、いつもと変わらぬ飄々としたまま、
 真直ぐとこちらを見下ろしてくる。射抜く強さで。

 「お前を壊すのも俺だと言っただろうが、」

 視線と共に落とされた、言葉。
 白い雪にまぎれて、それでも四散してしまうことなく真直ぐに自分に落ちる。
 勝手に白の世界に堕ちることすら許さないと、その黒曜石にも似た相貌が咎める。

 仕方なさそうに、本当に仕方なさそうに差し伸べられた、手。
 人よりも些か低い体温の彼の手は、それでも冷たくはない。
 いつだって、助けてはくれなくても、立ち上がるための手を差し伸べてくれる。
 それが、冷たい訳がない。
 現に、掴まれる事無く差し出されたままのその手のひらに降りた雪が、その体温に姿を水滴へと変える。

 その手を見て、先刻までの自分が嘘みたいに身を潜めた。

 自分よりも少しだけ大きいその手のひらをぎゅっと掴んで、引き上げられるまま身を起こす。
 途端黒のコートを白く染め上げていた雪の膜が崩れた。
 片手で反対の肩から腕にかけてを払うと、冷え切った自分の背に、暖かい手が触れた。
 背についていた雪が、彼の手によって払われる。
 2,3度触れただけだったのに、そこから全身に熱が広がる気がした。

 いつか。
 いつか、彼の雪を、自分が融かすことができたら良いのに。

 目の前に広がるブルネットの髪に、そっと思う。
 今は無理だとわかっているから、せめて、思うだけは許してほしい。
 せめて、柔らかに微笑んで、誓いをたてる位は。

 「・・・何だ」
 「いえ、別に。」

 気色悪ィ、と眉を顰めて言う彼は、先刻の温かい手の持ち主。

 早々に踵をかえしてしまった彼の背を追う。

 沈んでも良いと思っていた白の絨毯。
 そこへ並んで足跡を残しながら、顔を見せたひだまりへと歩いていった。











555申告して下さった鹿住晶様からのリクエストで“D.Gray−man”の神×アレでした(笑)
以前ちょこっとは読んでいたんですが、今回書くにあたって鹿住様からまた漫画借りたりしてるうち、
ぶっちゃけますとラビユウに大ハマリしたのはこの私です。(阿呆ぅー)
そして神リナでアレ神・・・。鹿住ちゃんとシュミ合わないことこの上無い(笑)
(彼女は神アレでラビリナなお方です)
今回も神アレ書きながら、「実は裏ではラビさんと繋がりがあるんだYO−☆」な神田にしてしまおうかとも
思ったんですが、思いとどまりましたよ、ちゃんと・・・(当然だ)
↑以前、「このあと神リナに続けられますよー」な神アレ書いて献上した覚えが・・(爆)
さて、所々ご不明なトコロがあったかとも思いますが、
実は、鹿住ちゃんのバースデーに差し上げた神アレ小説と、微妙にリンクしております。
でもまーそっち読んで無くてもなんとかなんべーっつーコトで普通に書いてしまいました。
どっちにしろよくわかんないしね。イメージで呼んでください。フィーリングですフィーリング。
献上物ということで、いつもは面倒・・いえいえ、苦手なために付けないタイトルも考えましたよー。
(タイトル考えるの本当下手なんで・・・。すみません・・・)
因みに今回の“snow”は「盲目・死・純粋さ等の象徴」というコトからもってきました。

鹿住様、キリバン申告誠にありがとうございましたぁ!!

鹿住様のサイトはリンクからどうぞ☆



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