3. crazy for you(貴方に夢中)
「具合悪い・・」
そう言いながらラビが部屋に転がり込んできた。
人のベッドを占領してうんうん唸っている。
心なしか、顔色も悪い。
医療班には行ったのかと尋ねると
「行ったけど・・誰もいなかったんさ」
だから適当に薬と思しきものをくすねてきた、とテーブルの上を指さす。
そこには錠剤の包み紙と、水を飲んだ後のコップ。
どうやら本当に具合が悪いらしい。
しばらくして、大人しく寝ていたラビが突然飛び起きた。
両腕を抱えて丸くなる。
「おい!どうした!?」
駆け寄って顔をのぞき込むも、垂れ下がった髪で顔が隠れてしまい、表情が読めない。
「ラビ・・・?」
「・・・・・るな」
「!?」
「来るな!!」
肩に触れていた手を振り払われ、その反動で後ろにあったテーブルに背中をぶつけた。
「つっ・・・!」
「あ・・・」
ぶつかった音に反応してラビが顔を上げた。
「ごめ・・・ユウ・・」
顔を少し顰めると再びもとの体勢に戻る。
様子がおかしい。
「・・ユウ・・」
くぐもった声。
「出て・・」
「え?」
「この部屋から出るんさ・・」
早く、と。
わけがわからない。
転がり込んで来たのはそっちなのに、何故俺が俺の部屋から出なきゃならない?
さっき飲んだという薬がマズかったのか、と咄嗟に薬の包み紙を手に取った。
すると、そこには・・・
『Love drug』(媚薬)
いくら俺でも、それが何なのかくらいはわかった。前にコイツに飲まされて大変な目に合ったから。
どうせこのバカは包みもろくに見ないまま、コレを飲んだに違いない。
そうしている間も、ラビの息は上がってゆく。
「ゆ・・・・早くここから出るさっ・・じゃないと・・・・」
抑えが利かなくなる、と。
その声があまりに切なげで。
そのせいか、足は部屋を出ようという俺の意に反してベッドへと向かう。
そっと頬に触れるとラビの肩がびくりと跳ねた。
「ユウ・・何やっ」
抵抗の言葉を紡ぐ唇を自分のそれで塞いだ。
触れるだけの、軽いキス。
「苦しいんだろ・・バカ」
目を見開いたまのまラビを押し倒し、彼の上に跨った。
見下ろしたラビの目は涙で潤んでいて、頬には赤みが差している。
「優しく抱く余裕なんかないさ・・?」
溜息混じりにラビが言う。
「だから出てけって言ったのかよ」
辛そうに彼は微笑んだ。
「いつも壊れるくらいに抱くくせに・・」
「あはは、バレてた?・・あれでも手加減してるんさ・・」
「俺はそんなにヤワじゃねぇぞ」
「・・ユウ」
わかってる。
コイツは俺のことを心配してくれてるんだってことくらい。
でも
このままコイツを一人になんて出来るわけもなくて。
つい、見栄を張ってしまう。
「これ以上、女の口から言わせんな・・・・・」
今度は深く口づけた。
お前は気づいてるんだろうか?
お前が俺を求める以上に、俺がお前を求めていることを。
決して口には出さないけれど。
壊れるくらいに抱かれることすら愛しくて、
いっそこのまま壊してくれと何度願ったことだろう。
こんなにも
お前に溺れているなんて。