ぼくらはただ、そこにいた。

1.蒼穹

幼い頃に見上げた空はとても手の届くものではなかった。
あの頃よりも幾分高くなった今の背丈でも爪先すら掠めない。
それどころか、あの頃よりも遠ざかった気がする。
薄い膜に覆われた蒼穹に、いつか届いてみせると射抜く強さで。



2.一騎

「総士?」
ぼうと蒼穹を見上げていると、自分の名が空気に響く。
かけられた声はいつもと変わらず、一歩引いた場所から。
「・・・どうしたんだ?」
あんまり目焼くとよくないぞ、。と、本当は続けたいのを知っている。
けれどその原因を知っているからこそ、言えずにいることも。



3.Shangri-La -理想郷

「前は、海と空が水平線で一つに溶け合っていると思ってたんだ」
けれどそれはずっと幼い頃。
紅い海を、知ってしまったから。
溶け合うどころか、この蒼穹さえ偽物だということを。
隣にいる一騎が話についてこれないことを知って呟いている。
ここはまだ、お前にとっては楽園だから。



4.想い

「一騎」
名を紡げば、途端微かに震える肩を知っている。
その反応にくすりと苦笑いを浮かべて。
気にしていないどころか、むしろ謝らなければならないのはこちらだというのに。
「―――すまない」
真実を、語ってやれないことを。
お前の先を、僕という狭い世界にしてしまったことを。



5.闘

その表情を見たくなくて、そっと一騎の肩に額を当てる。
まだ、細かく身体が震えているのが解った。
「・・・お前は、何の為なら戦える?」
知らない間に声が震えた。
どうして今日はこんなにも泣きたい気持ちになるのだろう。
嗚呼、きっと憎らしいくらい晴れ渡っている空の所為だ。
「・・・総士は、何かと闘ってるのか?」
その問いかけに、答えるわけにはいかなかった。
この頃は、まだ。



6.祈りが届くとき

一騎と別れて独りで歩くと、傍らに温度が無いことがとても寂しく感じた。



7.てのひら

夕焼けに赤く染まる空を見上げると、思い出されるのはいつも紅い海。
その小さなてのひらにはあまりにも重い、全てを包み込む存在を。



8.夢の向こう

ぎゅ、と瞳を閉じれば束の間の夢を見ることができる。
このまま何事も無く、楽園を保ったままの島。
だがそれでは、『彼女』はきっとずっとあのままだ。
どちらかが崩れなければ、もう片方が立つことが出来ない。
どちらにしても辛いのだ。
そんな結果しか見ることのできない夢の向こう、。



9.傷跡

昼に空を眺めすぎた所為だろうか。眼が、疲労を訴えていた。
特に、左眼が。
その瞼の上を走る傷跡。
僕を、僕にした。
その痛みにさえ喜びを見出していると知ったら
―――お前は、僕をどう思うのだろう。



10.楽園

何があっても守って見せると、そう誓った夕暮れの日。




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総士好きに30のお題さまより。
10話ずつ本編前、本編前半、本編後半の話。
それぞれ一応繋がってますが、各話ずつでも読めるかな、と


ばしょをみうしなったころ。

11.その笑顔がいつも、そばにあるから

「一騎君」
お前の声を呼ぶ声は幾つも有る。
高く響く音を僕は知っている。
けれど、僕の名を呼ぶ高い声は ひとつ も知らない。



12.瞳の奥は

その光景を見ての感情を理性で押さえつけて踵をかえす。
そこに含まれる色を知る人はいない。
知られてはいけない。



13.見えない、絆

「ごめん、俺、総士と行かなきゃならないから。」
そう笑顔を遮る声が遠くで聞こえた。



14.きみの隣じゃなきゃ

「無理に僕に付き合う必要はない」
常より低い声を出せば、びくりと震える瞳を知っている。
いくら地下へ訓練に行かなければならないからといって、
別に一緒に行く必要などないのだ。
「・・・俺といるのは、迷惑か?」
迷惑だ、と答えられる程には、僕はまだ大人ではなかった、。



15.未来

「乙姫・・・」
目の前に広がる紅の海に思いを馳せる。
「―――すまない」
楽園を保てなかったことを。
お前に、何もしてやれないことを。
「すまない・・・」
謝ることしか、できないことを。



16.そばにいたい

ゆっくりと、羊水の中の少女の瞼が持ち上がる。
ひたと合わされた瞳に映る色は、二人とも同じなのかもしれない。
『 そばに いたい 。 』



17.憂いある花のように

そうしてお互い微笑んだ顔は、憂いある花のように儚く。



18.消えないで

今にも溶けてしまいそうなその微笑に、
消えないでくれ、と心から思った。



19.Fly me to the Sky

そうしてまだ僕を赦してくれるのなら、
どんな手を使ってでもお前に
この晴れ渡った蒼穹を見せてやるから。



20.守るべきもの

お前達が、僕の、守るべきものであって。
それが、僕の、唯一の存在意義なのだから。


きみがいてはじめてぼくがいる。

21.忘れない

「私のこと、ただの人の形をしたコアだって思わないの?」
「ああ。」
思うわけが、無いだろう?
そう心からの言葉に心からの笑顔を見せてくれたお前を。



22.好き

「総士は、一騎が好き?」
「ああ。」
「私のことも、好き?」
「ああ。」
「一騎もね、総士のことが好きだよ」
「・・・・・」
「そして私も、総士のことが好き」
「・・ありがとう」
でもそれば、全て違う感情。



23.力

「戻ってこれたのは、お前のおかげだから。」
お前は、変わった。
新たな力を手に入れて舞い戻ってきた竜は。
「・・僕は、何もしていない」
伝説の英雄は、ただそこに在ることに固執して
結局は全てをその手から滑り落しただけだ。



24.大丈夫

「何も失くしてなんてないだろ」
受け入れることも力だと、彼女は言った。
「俺はもう、お前から離れたりなんかしない。」
これからは一緒にいることができるのだと、彼女は嬉しそうに笑ってくれた。
大丈夫。
もう、誰も独りじゃない。



25.想い出

「夕焼けだよ、総士。きれい。」
「ああ。」
「二人とも、嫌いなものとか、特に無いか?」
「僕は別に」
「私も、なんでも食べてみたい」
「・・・なんか、逆に困るなそれ」
「でも良かったね総士。一騎の手作りご飯だよ」
「一番喜んでるのはお前だろう」
「照れなくてもいいのに。」
「照れてない!!」
「素直に喜んでくれていいんだぞ。二人とも」
「・・・大きく出たな、一騎」
「面白くないー・・・」
「事実だろ?」
心地良い三角関係は、まだまだ続く。



26.飛べない天使

夢の中で翼をもがれて地へ落ちたというお前が、
ぎゅうと僕の服を掴んで放さずにいてくれたこと。
優しく背中を撫でてお前を安心させてやりながら、
安心させられていたのはきっと僕の方なんだ。
堕ちることを解っていて尚一時の翼を選んだ天使に優しく包まれていたのは。



27.信じてる、いつだって、きみだけ

「帰ってこなければいいって、思ったか?」
距離が少しづつ近づき始めてから。
最近のお前にしてはやけに弱気な言葉だ、と思いながら。
「帰ってくると、信じてたよ」
本当はきっと、こころの、どこかで。



28.蝉時雨 -夏の夕暮れ

満開の桜の木に止まった蝉たちが煩く鳴き続ける。
「総士って、以外と何も出来ないんだな」
頭を垂れた向日葵の周りを物珍しそうに蝶が舞う。
「頑張ってるんだよ、あれでも。」
椿の花が咲き誇る。
「・・・・お前達、僕のことを何だと思ってる」
ゆっくりと、その花を地へ落す。
「「秘密。」」
蝉たちが、その存在を掻き消すように花に埋もれて鳴き叫ぶ。


29.Separation -分離

「 そうし 」
ぼくのなかにひびくおと



30.「あなたは、そこにいますか?」

いつか
ふたたび
であうまで



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総士の世界っていうのは実はものすごく狭くて、
物理的なものだと、勿論島のことだけで、
人としては一騎と乙姫(一時まではお父さんの影響も強かったと思うけど)だけなんだと思う。
狭いが故に強く、迷い無く、悩み、苦しみ、弱い人なんだと思う。

21の台詞はビジュアルファンブックより拝借。
実は28が一番難産でした。げふぅ。