1 奥歯を噛んで (真矢)

好きになれない人だって思ってた。
全部自分ひとりでこなそうとして、
そのせいで足場が崩れるのを見ないフリをして進んでいく。
間違ってるって解ってることを「必要だから」っていって推し進めていく。
でも、結局それは正しいのかもしれない。
あたしにはできないことができる。
でも素直じゃなくて、やりたいことがあるならそうすればいいのに、
無理矢理飲み込んで、手前のこと一つ一つ片付けていく人。
何もしてないのに、あたしの一番大切なものを持っていった人。
そう思ってた。
けれど、見てしまったから。どうしてもっと早くに気付けなかったんだろう。
全てを飲み込んだ瞳で、奥歯を噛んで必至に耐えるその横顔に。
(守るために失うのは怖くない。)



2 辛くなんかない (翔子)

『ごめんね、皆城くん』
「何がだ」
『きっとこの後、ずっと辛いよね』
「・・・・・・・・君は、どこまで気付いていたんだ?」
『どうだろうね?本当は、何もわかってなかったのかもしれない』
「・・・・・・僕は、辛くない」
『うん、ありがとう。出撃許可、本当に嬉しかった』
「僕にできるのはそれくらいだ。・・・・何もしてやれなくて、すまない」
『どうして皆城くんが謝るの?今のは私の意志。』
「君の痛みは、忘れはしない。」
『ありがとう。・・・・伝言、伝えておいてね。4人に。』
「ああ、約束する。」
『ありがとう』
「ありがとう」
(忘れはしない。君が羽ばたいた大空の痛みと、恐怖と、悲しみと、願いを。)



3 …おまえなんか。 (一騎)

例えば、向かい合って視線を交わすとき。
戦闘時に、脳の一部を共有するとき。
隣で肩を並べて話すとき。
こんなに近くにいるのに、何も、わからないことが。
今までとがらりと顔を変えた世界についていけなくて。
どこまでが彼の本心で、どこからが彼の望みなのか。
どれが彼の、偽りの彼なのか。
解らないまま、時を過ごす。過ぎてゆく。
何時か、世界の全てが真実になるときまで。
(その為の嘘なら、幾らでも突き通せた。たとえそれで僕の足場が崩れ去ったとしても)



4 溜め息で殺した(咲良)

「あら総士。おつかれさん」
「ああ」
「・・・・・そんだけ?」
「他に何がある?」
「お疲れとか、調子はどうだとか・・・」
「調子はどうだ?」
「・・・・糖分取りなさい」
「甘いものは好きじゃない」
「あそ。じゃせめてもう少し肩の力抜いたら?」
「その所為で島が危機に陥ったらどうする」
「そん時はその時でしょ。」
「なんだと?」
「あんた一人で守ってるわけじゃないでしょって言ってんの。」
(いつも、わかってはいてもつい忘れがちなこと。一人で生きてるわけじゃない。)



5 本当は、 (甲洋)

崩れそうだ。
ほんのすこし足を踏み入れたら、脆く崩れ去ってしまうんじゃないかと。
完璧な城壁に見えて、その実ただの砂かもしれない。
必至に完璧なように見せている。そんな風に感じて。
そして、ほんのすこし安堵した自分がいた。
本当は彼も不安なんだと知って。
(脆く崩れ去るその様さえ完璧に見せようとするのかもしれない)



6 ジレンマ (乙姫)

「大切なものが一つじゃないから辛いんだね、総士は。」
「・・笑うか」
「笑わないよ。すてきなことだもの。」
「ただ、守りたいと思うだけだ」
「自分のことをどんなに犠牲にしてもそう思うって、簡単にできることじゃないよ」
「・・楽になりたいとは、思わない」
「うん」
「ただ、時々苦しいんだ」
「うん。」
「辛くはない。でも苦しいんだ。乙姫」
「うん。大丈夫。みんな総士の傍にいるよ」
(それでも全てを抱えたいと思うのは、傲慢なんだろうか。)



7 あまのじゃく (カノン)

似ていた。笑いたいときに笑えないところとか、素直になれないところとか、
あまり、自分の痛みに関して関心が無いところが。
彼は一人、この島の子供達とはどこかが違っていて、それでも根本は同じで、寧ろ強い。
平和で、戦いが無いこの島で、酷く遠い存在のような気がしていた。
どこかで滞っていた私の中のネジは、ここにくることでゆっくりとまた廻り始めた。
彼も、変わればいい。一歩目を絶えずふみだして。
少しづつ生まれ変わるように。
(信じること。それができる全てで全部だった。)



8 たった一言 (剣司・衛)

「あれ。総士、一騎知らね―か?」
「さぁな。帰ったんじゃないか。」
「はぁ!?あいつ!!今日こそ逃げるなって言ったのに!!!」
「一騎が逃げたことなんてなかったじゃないか」
「うるせぇ衛!言葉のアヤだろ!!」
「よくも毎日毎日・・・懲りずにやるな」
「い、いいだろべつに!!俺はあいつに勝つまで何度だってやるって決めてるんだ!!」
「それって自分で連敗だって言ってるようなもんだよ、剣司・・・」
「黙っておいてやれ」
「なんか言ったか総士!!」
「僕は言ってない」
「よし!今日の俺の相手はお前だ総士!!」
「「は??」」
「一騎の前の練習相手になってもらう!!どうだ!光栄だろう!!」
「全然」
「さては怖いんだなぁ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・衛、審判やってくれ」
「え!?」
「後悔させてやるぞ、剣司」
「おお、かかってきやがれ!!」
「え、ちょ、待ってよ二人とも〜〜」
(ほんの少し、殻の破れる音がした。)



9 偽りの仮面 (乙姫)

もう少し、楽に生きて良いのにって思う。
大事な物を全部一人で守ろうとして、砂の一粒も零さないように。
受け止める材料に自分自身を使っちゃうから、
そのせいで自分が崩れやすくなったとしても、辛くないって言う。
それが決して嘘じゃないっていうことはわかっているけれど。
総士が傷つくことでほかの誰かが傷ついてしまうっていうこと。
総士の帰れる場所があるっていうこと。
総士を、これ以上ないくらいに大切に思っている人がいるっていうこと。
それを、わかってないんだ。
だからどんな無茶もするし、辛くなっても誰にも言わない。
だれだって、ひとりで生きていけるはずがないのに。
みんなの傷を一人で背負おうとするその背が、今にも折れそうなのに。
もしかしたら、たとえ折れたとしても、本人が気付かないままかもしれない。
自分のせいで他の誰かが傷つくのが怖いのかもしれない。
もうすこし、ほんのすこしでもいいから、暗い海を泳ぎきって。
そうすればきっと、見つかるはずだから。ひかり が。
『あなたひとりじゃないよ、総士。』
(その小さな手を守るには、僕の手はあまりにも小さすぎた。)



10 素直になりたい (一騎)

「はい、皆城です」
「―――総士か?」
「・・一騎か。どうした、こんな夜中に」
「ん、ちょっと。・・・今、大丈夫か?」
「ああ。何か、あったのか?」
「いや、別にないんだけど・・・ただなんとなく、総士の声が聞きたくなったから」
「・・・なんだ、それは・・・・・」
「そのままの意味だろ」
「・・・・・・・・」
「・・・お前は、さ。一人で、なんでも抱えすぎなんだよ。」
「・・・・・・そんなことはない」
「あるって。総士がそう思って無くても、そうなんだよ」
「・・・やらなければならないことをしているだけだ」
「でもそれって、べつに総士が一人でやらなきゃならないことじゃないだろ」
「それは・・・・」
「俺は、俺の手は、いつでも空けておくからさ、・・・・・少しくらい、頼ってくれよ」
「一騎・・・」
「折角、お前とこうして話せるようになったんだし。もっと、総士の傍にいたい。」
「僕は・・・」
「あ、時間だ」
「え?」
「一番に言いたかったんだ。誕生日おめでとう総士。生まれてきてくれて、ありがとう」
(ほんの少し、があったなら。素直に笑って言葉が言えたのだろうか。)





皆城さんと島の愉快な仲間達・・・・・・にはならなかった(爆)
どうしても私の中の総士って、一騎と乙姫が一番で、
それ以外は同列2位、というイメージがあって抜け出せないというか・・・;;
その所為で、総士視点をやめたんですが
(というか総士は人のことを感情的にどうこう見ることができない気がする)
逆に、ソレがつらかった・・・・;;
総士が誰かと2人きりになるシチュエーションが思いつかない;;
ということで、「周りから見た総士像」にしたわけなんですが。
・・・・・・・・・いやぁもう、失敗したなぁとしか(爆)
時間かけた割に納得いかない内容で悔しいやらもうしわけないやら;;
ハッピーバースデー総士。





コチラより「素直になれない10のお題」(笑)お借りしました。