「ユウのせいだからね」
赤い髪の子供は、何も持たなかった。
望むものすら、望むということすらなかった。右目すらなくしていた。何も持っていない。
だからこそ、何も捨てるものがいらないからこそ、その特殊な生業に適しているのだと言われ。
言われるがままに全てを記録し、流されるままに傍観して生きていた。
けれど、心を与えられてしまった。
これまで数えきれない程の人間と会ったにも関わらず、たった一人の者に。
持ってはならないもの。持っては辛くなるだけなのに。
気付いたときには、その手にしっかりと握ってしまっていた。何も持たずにいた子供。

「なんだそれ、すげぇムカツク」
黒い髪の子供は、ただ一つだけを求めていた。
けれどそれは何時しか二つになっていた。気付かぬうちに。
片方を追い求め、けれどもう一つのためには留まらなくてはならなかった。
身動きがとれなくなり、やっとのことで抜け出した先には時間という壁が立ちはだかった。
間に合わなかったのだ。届かなかっただけだ。伸ばした手は空を斬った。
片方の手に、二つ目の大事なものは残っていたけれど。
「俺を狂わせたのは、お前じゃねぇか」
「違うね。俺は何も悪くない。ユウが、全部悪いんさ」
「黙れよ、もう」
そして今夜もまた、お互いを狂わせた男の腕の中で啼く。







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